1.介護分野のリスクマネジメント (基礎編)

1−@リスクマネジメントの仕組み

◆事故発生の仕組みと防止対策◆

社会福祉施設はリスクマネジメント一色?

さて、今や特別養護老人ホームを初めとする老人福祉施設にとって、ご利用者の事故防止は最優先課題の1つとなっています。介護保険導入で措置が契約に移行したこと、拘束ゼロが徹底し、拘束をせずに転倒防止策を講じねばならないこと、など色々な背景がありますが、要するに、「社会福祉の事業者も一般企業並になれ!」ということでしょうか。(つまり、一般企業並の事故防止策を実行しろ、ということ。)
それでは『一般企業並のリスクマネジメント体制』を構築すればそれでOKなのかというと、それはNOなのです。本来、手本とすべき一般企業のリスクマネジメント自体もモデルにはならないからです。

従来の企業の事故防止策は意味がない

だいぶ前から企業の危機管理能力が疑問視されてきています。1999年9月の東海村の臨界事故あたりから顕著かなと思われます。その後地下鉄の脱線事故、集団食中毒事件、度重なる医療過誤(患者や点滴の取り違え事故など)と、ここ3年間位の間に「そんなバカな!」という事故がたくさん起きています。なぜ次から次へと「そんなバカな!」が起こるのかと言うと、「もう従来の事故防止策ではダメですよ。みんなが幸せになれる"リスクマネジメントという手法"を導入しなさい。」という警鐘と受け取ったほうが良いでしょう。それでは従来の事故防止策とリスクマネジメントではどう違うのでしょうか?
従来の事故防止策は「"人"原因主義」と呼ばれ(私が勝手に呼んでいるのですが)事故の原因を「"人"のミス」というところに求め、防止対策は「"人"がミスをしないように管理をする」というものです。ですから大きな事故が起きた時、社長など偉い人が記者会見に出てきて「全社員が初心に返って気持ちを引き締め、」とか「当事者を厳重に処分し」というのが結末になってしまいます。「どのようにして事故が起きたかを究明し、その対策としてこれこれを実施したしました。だから、二度とこのような事故は起きません。」という記者会見は絶対に聞かれないことになります。
しかし、たとえ全社員が初心に帰っても、関係者を厳罰に処しても、この企業の仕組みの中に相変わらず同じ危険が潜んでいれば、再び違う人が事故を起こすことになって、根本的な対策にはなりません。 そこで、リスクマネジメントという考え方が生まれました。リスクマネジメントの考え方は前提から大きく違います。

人はミスを犯すもの

リスクマネジメントでは、「人はミスを起こすもの」ということを大前提に考えます。「人はミスを犯す」という前提に立って、2つのことに取組みます。一つは「人にミスを起こさせる原因を含めて、あらゆる事故原因を究明して除去すること」。もう一つは「人がミスをしても事故につながらないような仕組みを作ること」です。リスクマネジメントを実施する上で、個々人の注意や工夫はもちろん必要ですが、そこに全てを頼ってはいけません。組織のシステム(仕組み)として機能して、はじめて「働く人にやさしい事故防止対策」となります。
ある誤薬対策の例を見てみましょう。人にミスを犯させる原因として、与薬時に気が散漫であったり疲れていたりすることがあげられます。そこで、ある施設では、「夜勤明けの介護職は与薬をしてはいけない。」というルールを作りました。また、この施設では、ミスをしても事故につながらない仕組みとして、必ず2人で与薬チェックをする(ダブルチェック)の決まりを作りました。

まとめ

★ 従来の事故防止活動⇒"ひと"原因主義

  1. 事故原因は"ひと"のミス
  2. 事故防止は"ひと"管理

★ リスクマネジメント⇒人はミスを犯すもの

  1. 人にミスを犯させる原因も含め、事故原因を究明し取り除く
  2. 人がミスをしても事故につながらない仕組みを作る。

ケーススタディ

さて、それではケーススタディを一つやってみましょう。
皆さんの施設に新入職員さんが入ってきたとします。新入職員さんは職場に不慣れであることと技術や知識が未熟であるという2点で様々な危険があります。これらの危険に対処するためにはどのようにしたら良いでしょうか?

答えは→


1-@リスクマネジメントの仕組み

1-A『賠償責任』とは?
       

1-B「安全配慮義務」とは?