介護施設のリスクマネジメント Q&A

 療養型病床群のナースです。移動式の椅子→そのまま浴槽という機械浴で、入浴介助をケアワーカーさんたちで行っています。
 この機械浴が設置された時、業者さんからの説明会があったそうですが(何年も前の話)、取り扱い説明書も手順書も何もないのです。当時、業者さんの説明を受けたスタッフも減ってきて、新人は口伝えで指導のやり方を教えてもらっています。今までストッパーのかけ忘れなどで小さな事故は起こっています。大きな事故になった時、マニュアルも手順書も何もない状況なので、これでいいのか疑問なのですが、キャリアの長いケアワーカーに聞くと、「何事も経験してからだで覚えてもらう」と体育会系です。
 事故の時、報告書をつくろうにも、これではどこでエラーしたのか基準がなく話にならないと思うのですが、こんなんでいいのでしょうか?

 ご指摘のとおり、取扱説明書も手順書もないことは大変問題です。ただし、取扱説明書と手順書は性格が異なりますから、分けて考えましょう。
 まず、取扱説明書です。メーカーは製品(製造物)を販売する時、誰でも安全な取扱いができるように注意点を示した取扱説明書を添付する義務があります。しかし、施設が取扱説明書を紛失したため、操作ミスが発生し事故が起これば、施設の責任になります。メーカーに連絡してすぐに説明書を送ってもらって安全な操作方法の確認を行ってください。
 また、施設は設備をいつも安全な状態に保っておく義務がありますから、専門業者に依頼して保守点検を行うことも必要です。
 さて、次に「手順書」の問題です。取扱説明書がそろったからといって、どの利用者に対しても安全な入浴介助ができるわけではありません。機械の取扱説明書というのは、あくまでも標準的な使い方についての基本操作が示されているだけですから、身体機能や認知能力の異なるすべての利用者にあてはまるわけではありません。
 そこで、どのような利用者にどのような安全配慮を行い、どのような手順で介護を行えばよいかを書いた「手順書(マニュアル)」が必要になりますが、これはメーカーはつくれません。道具を使いこなしてすばらしい仕事をする名職人のように、介護のプロが機械の性能をよく理解して、どのような使い方がそれぞれの利用者にとって安全か、満足度が高いかを工夫し、手順を考えなければなりません。また、施設は全職員が安全に介助できるよう、これらの工夫を手順書にしなくてはなりません。ですから、手順書がないことが原因で事故が起これば、施設の責任が問われることになります(職員がカラダで覚える前に事故が起こったら、利用者はいいですよね)。
 たとえば、広島のある大きなデイサービスでは、家庭浴槽(一人浴槽)を導入した後、入浴介護のインストラクターの指導を受け、利用者ごとの細かい介助方法をイラスト化して「誰が見てもわかる手順書(マニュアル)」にして、すばらしい入浴介助を行っています。
 最後に一言。
 利用者に対して機械を使用する際は、機会の使用方法に気を配るだけでなく、使用すること自体が適切かどうかを検討することも必要です。「機械浴やチェアインバスは洗体の道具であって入浴の道具ではないので、入浴効果が上がらない」と使用しない施設も多くありますから。