
居室内での転倒骨折事故
性別
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女性
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年齢
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84歳
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住居形態
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一戸建ての1階暮らし
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【当人の状況】
独立型二世帯住宅/娘の家族が2階に居住)、夫とは死別
健康状態…事故までは健常であったが、本転倒事故をきっかけに要介護2状態になる
【事故の状況】
Aさんは二世帯住宅とは言え、日常生活はすべてにおいて自立した生活を送っていました。
ある日台所から床続きのリビングに移動途中、リビングの絨毯のヘリに躓いて転倒し、 大腿骨頸部を骨折しました。リハビリを含めて2か月半を要し退院しましたが、絨毯を どかした後のフローリングで滑って尻もちをつき、尾てい骨を骨折しました。不幸なこと に退院後すぐに再入院となりました。また、悪いことは重なるもので、入院中に肺炎を発症し、体重の大幅減と体力を消耗しました。
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【知恵と工夫】
絨毯のヘリにつまずいて転倒と言うケースはとても多くあります。絨毯に限らず、「段差」と認識でき ない場所で躓くことが多いのです。しっかりした段差は認識できるのでかえって転倒は起きにくい ものです。
・対策としては5ミリとか1センチの段差になりうるもの(絨毯など)は取り払う。あるいは『ヘリ』がめくら れない工夫を施すなどが必要です。
・また、段差と認識できても夜間のトイレなどで暗い時にはやはり転倒リスクが高まるので、段差部分 に蛍光テープを貼っておくなどは有効な対策になります。
・可能ならば住宅改修で段差を解消する、レンタル用品のスロープを使用することも手立てとして検討する価値があります。
・そもそも加齢とともに体力・筋力が落ちるので、筋肉を優しく鍛える、ストレッチをする、散歩の時など は膝を上げて歩くことを意識するなども転倒予防に役立ちます。
Aさんの退院後について紹介します。
2度目の退院時には要介護認定を受けて(要介護2)、理学療法士のアドバイスを受けて住宅改修をしました。
和室部分をすべてフローリングに改装、それに伴い室内用の介護シューズを使うようにしました。手すりを生活圏全体に設置、残った段差もスロープ板をレンタルして解消しました。
腕の支持力も弱く杖では心もとないので、歩行器を使っています。(外出時は丈夫なシルバーカーを使用) 改修のおかげで、人の補助なしで歩行器を使って家のどこへでも安全に移動できています。
これまでと異なるのは「調理」「洗濯物干し」「入浴」の介助を娘さんが担っていることです。その他は自身で行っています。介護保険は住宅改修(限度額はオーバー)、電動ベッドやスロープをレンタルし、週2回の訪問リハビリ、週1回の通所リハビリを利用しています。
今回の2度の骨折事故はつらいことでしたが、介護保険制度をしっかり利用し専門家のアドバイスを活用することで、これまでと大差ない生活を送ることができています。
介護・介助という人の手によるサービ スは重要ですが、住宅改修や福祉用具の活用により、QOL(生活の質)を維持させることができる例と 言えます。
(監修:PT志垣健一朗)

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